SHIKOの道

〜海外の最新洋書と好きな音楽を中心に〜 まずは試行と思考を高い志向で

英FTに続き売却が噂される英The Economist、彼らは日経の買収をどのように報じているのか?

先週日経から発表された英フィナンシャル・タイムズ(FT)の買収

www.nikkei.com

広告収入の減少や紙媒体の売上低下により、新聞業界そのものが厳しいと言われる中、日経新聞だけは”経済”という強みを武器に着実な経営を行ってきた。紙媒体は確かに減少しているが、電子版の加入者も少ない。

実際に、朝日新聞デジタルが約24万人に対して、日経電子版は約43万人の購読者がいる。

とはいえ、ニューヨークタイムズ紙の約91万人と比べると、そのブランドはあくまで"国内"のみだ

今回のFT買収は、グローバル展開を睨んだブランディング戦略だ。約50万人の購読者のFTと組んだ日経の総読者数は、ニューヨークタイムズ紙を上回る93万人となる。

数は影響力を生むのか?

この1週間で"Nikkei"の名前が世界で報道され、知名度は向上したと思われるが、実はそうではない。ネガティブな報道の方が多いのが事実だ。

www.economist.com

Nikkei has promised to respect the FT's editorial independence, even though its own journalistic culture is far removed from that of the British paper.It is a willing participant in Japan’s system of cosy “press clubs”, in which reporters are spoon-fed news in return for steering mostly clear of negative coverage.

英紙のジャーナリズムの精神が日経に合わなかったとしても、日経新聞はFTの編集権独立を尊重することを約束した。こじんまりとした日本の記者クラブに取って、喜ばしい参加者だ。日本の記者クラブは負の報道は明らかにされないシステムだから。 

In 2011, for example, the Nikkei ’s editors dragged their feet for weeks after the FT began reporting the accounting scandal at Olympus, a camera-maker.

例えば、2011年にFTがオリンパスの会計不正を報道した後も、重たい足を引張っていた。

報道の自由というジャーナリズムの魂だ。

ただ日本の場合は、"記者クラブ制度”、”大企業批判のタブー”といった独自の報道文化が存在する。これは報道の独立性が保障されている英メディアが最も恐れることだ。

このリスクについて、It is a willing participant in Japan’s system of cosy “press clubs”と皮肉を込めて言ってしまうのが、The Economistらしくていい。

The Economistの売却は?

Pearson's sale of the FT did not include its 50% stake in The Economist , which confers neither corporate nor editorial control.However, Pearson has said it is in talks to sell itsEconomist stake.

そしてThe Economist自身も売却の話が進められている。ピアソン氏が保持するThe Economistの株式の売却先を探しているという報道もある。

The transfer of one class of shares would have to be approved by independent trustees whose role is to safeguard our corporate and editorial independence.

株式の譲渡は、弊社とその編集権の独立を保障することを役割とする第三者にって承認されなければいけないだろう。

The transfer of the remaining shares would have to be approved by our board.

 残りの株式の譲渡については、我々の委員会によって承認されなければいけないだろう。

さすがに自分事、

日経の書きっぷりと比べて、皮肉なし、トーンが本気なのは気のせいではない。

彼らが最も大切にしていること、それは報道の独立性。これを維持することがどれだけ難しいかは、日本のメディア構造を見れば一目瞭然だ。

これができるからこそ、報道に独自性が生まれ、世界中にそれを読みたいファンがいる。

日経が世界の一流メディアとして認められるために必要なのは、英FTのコンテンツではなく、報道としての"あり方"なのである。

The Economist [UK] July 25 - 31 2015 (単号)

The Economist [UK] July 25 - 31 2015 (単号)

 

 

日経新聞の真実?なぜ御用メディアと言われるのか?

日経新聞の真実?なぜ御用メディアと言われるのか?