SHIKOの道

〜海外の最新洋書と好きな音楽を中心に〜 まずは試行と思考を高い志向で

経済は「予想外のつながり」で動く――「ネットワーク理論」で読みとく予測不可能な世界のしくみ

タバコの税率を上げたら健康被害が増えた?
タバコの税率を上げれば、タバコの消費量減ることは経済学的に証明されていようです。
価格が上がれば、それに伴い購入者が減るという極めて合理的な考え方だ。
にもかかわらず、なぜ健康被害が拡大したのでしょうか?

答えは、喫煙者が1本あたりからより多くのニコチンを摂取していたとうことだ。
ある喫煙者は銘柄を変えたということ。
購入できる本数に限りがあるため、喫煙者は1本あたりのニコチン含有量が多い銘柄にシフトしていたのだ。
別の喫煙者は、今まで以上に根元まで吸い切るようにしたようだ。

このように経済学の理論だけでは、実社会を語ることは難しい。
しかし、経済学に"ある"考え方を足してあげると、世の中の動きがわかってくるという。
その理論とは、"ネットワーク理論"
英国奇才のエコノミストであるオームロッド氏の著書で解説されている。

予想外のつながりで動く
自分では合理的な判断を下していると思っているが、多くの影響を受けている。
大衆メディアはその典型だ。
例えば映画を観に行く時、100%自分の思いだけで観る映画を決めているだろうか?
なんとなく面白そうと思いつつ、

巷で流行っているから、
スピルバーグの最新作だから、

といった合理的な考えではない要素が、実は多くを占めていないだろうか?
しかも、知らず知らずのうちに脳内で影響を受けていることが多い。

スマホSNSの登場により、必要以上に繋がった社会に我々はいる。
この複雑な社会の繋がり(ネットワーク)を下記の3種類に分類していることが、本書の特徴だ。
  1. スケールフリーのネットワーク
  2. 狭い世間のネットワーク
  3. ランダムなネットワーク
1.スケールフリーのネットワークとは、ほんの数人のエージェント同士の集まりだ。
しかし、そのエージェントには不特定多数のつながりを持っている。
つまり、そのエージェントが社会のハブとして、関係性を繋ぐ役割をしている。

2.狭い世間のネットワークでは、そのようなエージェントは存在しない。一方で一人一人が似たような考え方を持っており、非常に緊密的な関係で繋がっているような状態である。

3.ランダムなネットワークでは、上記のような構造は持たない。街を歩いているときに、すれ違った人から風邪を貰うような関係性で、文字通りランダムな繋がりだ。

なぜネットワーク効果を知る必要があるのか?

人を動かす大きな要因は、このネットワーク効果だと言っても過言ではない。

世の中にはモノやサービスが溢れている。その中で、人がどのような思考で選択をするのかを知ることは大事なことなのだ。

社会は在り方は日々変わっていく。去年は通用したマーケティングが、今年は全然当たらないってことだってある。

しかし、ネットワーク理論をある程度わかっていると、先手が打てる。

例えば、スケールフリーの理論を押さえているならば、

まず最初のインフルエンサーの行動に注力し、彼らの行動変化を見極めるとよい。

見極められたならば、インフルエンサーから第二第三のグループへ波及する時には対策を打てる可能性が出てくるからだ。

最初に行動を変える人を見つけることから始めないといけない。

これは難しい作業だ。その人が本当に影響を持っているかなんて、パッと見でわからないからだ。

なので、著者も最後にこのようなメッセージを残している。

「特効薬」を探すのではなく、たゆまぬ思考錯誤を