SHIKOの道

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ヒトラーに抵抗した人々 - 反ナチ市民の勇気とは何か 著者:對馬達雄

だが、外政問題以上に、国民大衆には、失業不安と見通しにない生活の解決が最大の関心事であった。誰もが社会的な転落と窮乏の不安を抱えていた。
歴史を振り返るとヒトラーといえば、悪人にレッテルが貼られている。そういう、教育を受けてきたからだ。
しかし、1つ視点が抜けている。当時の時代背景を切り離して、今の視点だけでものごとを考えていないか?ということである。

当時のヒトラーは女性支持が圧倒的に高かった。なぜなら、失業不安に対する政策にも力を入れていたからだ。
それを理解した上で、もう一度歴史を見つめてみる。この本を通して。

最初に断っておくが、僕はどちらかというと安倍政権には肯定派だ。
全体主義への危惧という観点だけで、この本を片付けたくないからだ。

そう、この本の本筋は圧倒的な支持率を持つヒトラーに対して、反対していた人々を描いたものだ。
多くの人(=大衆)は、経済的な利益性から、戦争やホロコーストに目を背けていた。
そんな中で、ヒトラーに代わる新しいドイツを目指していた人々がいた。彼らは、既成の組織やとらわれず、後ろ盾もなく、自らが責任を持った勇気ある市民である。
彼は、自分たちが人間としてどう生きるべきか?という問いに真っ向から立ち向かっていたのである。

本書の帯にも書かれているこの言葉はまさしくそうだ。
「いつでも人には親切にしなさい。助けたり与えたりする必要のある人たちにそうすることが、人生でいちばん大事なことです。だんだん自分が強くなり、楽しいこともどんどん増えてきて、いっぱい勉強するようになると、それだけ人びとを助けることができるようになるのです。これから頑張ってね、さようなら。お父さんより」(反ナチ市民グループ《クライザウ・サークル》のメンバーが処刑前に十一歳の娘に宛てた手紙)
当時の経済的貧窮に迫られた中、誰もが仕事やお金を欲する時代の中、
この人は「親切」「優しさ」という価値観を最上のものであるという結論を出していた。

今の時代、「生き方」について多くの啓蒙者がいる。中には???な人もいるが、そんなことはこの話では関係はない。

要は、一人一人が生き方について問われたときに、あまりにもその価値観がふわっとしていないか?
もちろん自戒を込めて話であるが、誰かがこう言ってたとか、〇〇さんはこう言ってたとかというレベルで自分の価値観を定めていないか?

こう言った本質的な問いかけに背けずに向き合う自分だありたい、そのことが胸に突き刺さった1冊だった。

ナチスの戦争1918-1949 - 民族と人種の戦い (中公新書)

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