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SHIKOの道

〜海外の最新洋書と好きな音楽を中心に〜 まずは試行と思考を高い志向で

2015年ノーベル経済学賞 A・ディートン氏の著書『大脱出――健康、お金、格差の起原』

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進歩と格差の終わりなきダンス
なぜ人間の幸福が、全体で見れば、 長い時間をかけてずっと良くなってきたかを知りたいなら、本書を読むべきだ。ビル・ゲイツ
今年のノーベル経済学賞を受賞したA・ディートン氏が2013年に出した「The Great Escape」。
日本でも昨年発売されて話題になっていた。ノーベル賞受賞で再度注目が集まっている。

大脱出――健康、お金、格差の起原

大脱出――健康、お金、格差の起原

本書は単なる「お金」だけの話ではない。
サブタイトルにあるように「お金」と「健康」と「格差」について書かれている。
お金だけでなく、健康やカロリー、平均寿命など様々な要素を「消費」の観点から考察されており、ビル・ゲイツがいうように、本書を読めば経済発展が、「消費」を劇的に発展させたのかを理解できる。

格差の何が問題なのか?
世界では格差拡大が一つの大きな問題となっている。
まず前提として、格差は絶対的「悪」ではないということだ。
つまり、資本主義の競争上手く働いたとき、発展の副産物として格差が生まれる。誰もが同時に成長することはできないのだから。
上手く行かなかった場合は、次にどうすればいいかを考え、そこから工夫が生まれ、イノベーションが生じる。これがプラスのサイクルだ。

問題は、次にどうすればいいか?という考える機会を勝者が奪いとって、格差を固定化しがちということだ。単純に増税をすれば、海外の資本を移してしまい、空洞化をむ。
勝者の道徳的義務をどのようには果たすのかが課題となっている。
 
そこで、出てくる指標が幸福度(=人生の満足度)だ。
人は稼いだ分だけ幸せになれると考えがちだ。
より良い会社には入り、高水準の給与貰う。そのために学生のときから必死に努力してきた。
しかし、人間そうは単純ではない。所得と幸福度はある水準までは比例するが、そこに達すると満足度が落ちると統計的に結論付けている。なので、所得ばかりではなく健康や教育、そして社会参加に重要性をシフトしていくべきという主張になる。
彼の功績は、この一人一人の消費の積み上げ(ミクロ経済学)から、全体の変動マクロ経済学を導いたこと。つまり、空論だった経済学を実世界に近づけたことである。
The second achievement highlighted by the Nobel committee was Mr Deaton’s help in bridging the gap between macroeconomics and microeconomics—and in particular in understanding the relationship between consumption and income. This relationship is crucial. The difference between the two is the level of savings; in turn, savings determine how much an economy invests and ultimately society’s future wealth.
格差問題を解決するには?

ここからは本書を読んだ後の個人的な見解。

経済学的なアプローチで人を幸せにするには、2つしかない。平等にパイを分けるか、パイそのものを大きくするかだ。 

経済成長は目指さなければいけない。だけど、高度経済成長期のような劇的に成長は望めないという現実は受け入れなければないらい。

そこで、富の再分配が重要となる。単純にいうと、税を徴収し、社会保障を充実させるという社会のサイクルを回さないといけない。

仮にディートン氏の研究を正しいとして採用すると、これまでの政府決定を根本的に見直す必要があるのではないか?すなわち、社会全体の満足度は"所得"だけでは決まらないという前提では、別の要素も考慮し、政府の支出先を決定しないといけないはずだ。

ではどうやって決定するのか?

マイナンバーのような管理方式で、様々な情報が管理され、ビッグデータにより最適な政策を導くようになるかもしれない。

もちろんプライバシーの問題はある。

しかし、成長が望めない社会では、プライバシーという対価を払うことでーより良い社会福祉を享受する、そんな未来が来るのかもしれない。

大脱出――健康、お金、格差の起原

大脱出――健康、お金、格差の起原

The Great Escape: Health, Wealth, and the Origins of Inequality

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