今や世界の中心となったシリコンバレー、その帝国に潜むリスクとは?
アメリカの富がウォール街からシリコンバレーへ
かつては世界に大きな影響力を持っていたウォール街も2009年の金融危機以降、力を失いつつある。そんなウォール街に集中していた富が、シリコンバレーにシフトしている。
言うまでもないが、シリコンバレーとはGoogle、AppleそしてFacebookといったIT界のメガ企業が本社を置く場所。
As a result, American capitalism has a new hub in the west. Wall Street used to be the place to seek fortunes and make deals; now it is increasingly the Valley
そこはピーター・ティールが本書「Zero to One」で描いた、新しい何かが生み出され続ける場所である。
シリコンバレーがある限り、アメリカを中心としたグローバリゼーションは終わらない。他国はアメリカで生まれた何かを、水平展開しているに過ぎないからだ。
シリコンバレーは成長し続け、アメリカはその影響力を保持し続ける。誰もがそう思うだろう。だが、エコノミストは、そんなシリコンバレーの裏側に潜むリスクについて書いている。
単なるバブル崩壊ではない
公開しないというリスク
と言いつつ、投資がシリコンバレーに集まっているのは事実である。実際に、JPモルガンはスタートアップしたばかりのベンチャーに対して、新しい融資サービスを始めた。クラウドファンディングという方法もある。スタートアップ企業は様々な方法で資金を調達できるようになったのだ。
そのため、上場するタイミングが昔に比べてゆっくりとなっている。1999年には平均4年だったのが、昨年には平均11年もかかっている。
Today’s firms are staying private for longer. Tech firms that went public in 2014 were on average 11 years old; back in 1999 they waited only four years before listing their shares.
もちろん、上場は手段であって目的ではない。適切なタイミング、会社の規模、市場の状況などを総合的に判断しなければならない。そして何より、何のために上場するのかという目的が大切なのは言うまでもない。
しかし、そういった上場する企業が少なくなることのリスクをエコノミストは指摘している。
1つは会計のディスクロージャーが甘くなりがちになるということ
One is that firms under no obligation to make public a full set of audited accounts will remain veiled from the scrutiny of analysts and short-sellers and so act irresponsibly.
もう1つは、富の循環が悪くなるということ。
The other risk is that a charmed circle with great wealth becomes cut off from everyone else. For a group rewriting the rules for industry after industry, that is a special danger.
この2点をどこまで深刻に考えるか?もしかしたら、杞憂なのかもしれない。
なぜならシリコンバレーにとって、最も恐れることは"リスクを取らなくなること"そのものだからだ。
GoogleやApple、AirbnbやUberのような成功者は、ほんの一握りでしかない。その裏には数え切れないほどの失敗があり、その先駆者達はリスクを恐れず、自由な発想と熱い情熱で立ち向かっていたのだ。
その情熱が失われない限りは、ZeroからOneを生み出し続けることができる。
それはまたアメリカを中心としたグローバリゼーション、アメリカの世界に対する影響力が続くことを意味している。
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